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<title>銀の車輪　創作Novel</title>
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<description>創作小説、置いてます。
パソコン閲覧推奨。</description>
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<title>第１話　翼を持たぬ天使は地を這うだけ　＊３＊</title>
<description> 　それから、一時間ほど経過した。　黒髪の青年は、書棚の本という本をパラパラめくり、その度にアテが外れたという顔で本をモトの場所へ戻していく。　ロゼットに銃を向ける紅茶色の髪の青年は、ぽつりぽつりと煙草を吸っていた。　姿なき声は、あれを境に聞こえない。　いつ撃たれてもおかしくないという重圧と、密閉され淀んだ室内の空気──それらが一秒ごとにロゼットの精神を削り取っていき、ロゼットは次第にうな垂れてい
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<![CDATA[ 　それから、一時間ほど経過した。<br />　黒髪の青年は、書棚の本という本をパラパラめくり、その度にアテが外れたという顔で本をモトの場所へ戻していく。<br />　ロゼットに銃を向ける紅茶色の髪の青年は、ぽつりぽつりと煙草を吸っていた。<br />　姿なき声は、あれを境に聞こえない。<br />　いつ撃たれてもおかしくないという重圧と、密閉され淀んだ室内の空気──それらが一秒ごとにロゼットの精神を削り取っていき、ロゼットは次第にうな垂れていった。<br />「──おい。しっかりしろ」<br />　頭上に降り注ぐ声──ロゼットは、ゆるゆると顔を上げる。<br />紅茶色の髪の青年が銜えていた煙草の吸殻を、片手で摘み離していた。<br />「さっきも言ったとおり、俺達の邪魔をしなければ、撃ちゃしないから」<br />「……そんなこと、信じられない」<br />　ロゼットがそう言うと、紅茶色の髪の青年は煙草の吸殻を口に戻し、銃を持たないほうの手でズボンのポケット中から携帯灰皿を出して、その中に吸殻をぷっと吐き捨てた。<br />「ほら、公共マナーを守っているだろ？　環境に優しい──だから人にも優しいんだ。少しは信じる気になったか？」（いや、まったく、全然。とゆーか、公共マナーを守るんだったら、物取りなんてやめろ、今すぐ）<br />　ぐったりしつつもロゼットが胸中でそうツッコミをいれた、その時だった。<br />「駄目だ。ない」<br />　滞る室内の空気を、わずかにかき混ぜたのは、本を捲っていた黒髪の青年である。彼は書棚の下段を覗き込むように折っていた膝を伸ばしながら、悔しげに呟いた、<br />「女難はまだ続きそうだよ」<br />「モテる男はツライねぇ」<br />　紅茶色の髪の青年が茶化すように言い、笑う。だが銃口と視線は油断なくロゼットへと向けている。<br />「さて、引き揚げますか」<br />　膝についた埃を払いながら、そう合図する黒髪の青年に、ロゼットは身体を固くした。<br />（引き揚げる際、彼らは自分を撃っていくだろうか）<br />　何しろロゼットは彼らの顔を、しっかりと見て記憶してしまっている。<br />　引きつるロゼットの顔の筋肉。<br />　黒髪の青年は、書棚に立てかけられていたキャンバス──システィーナの聖母──をロープで結わえ背負い込んだ。<br />　そして窺うような視線を向けるロゼットに気がつくと歩み寄り、屈み込んでロゼットの顔を覗き込んだ。<br />「いつ泣き出すかと冷や冷やしていたけど、随分、我慢してくれていたね。ありがとう。何しろ、この部屋に入ってきた時、睫が濡れていて──泣いていたみたいだから」<br />泣いていた──青年のその鋭すぎる指摘に、つい一時間ほど前の寝台での荒々しい悲しみがロゼットの胸に波となって押し寄せ、頬に滴を伝い落とした。<br />　屈んだままの青年は、虚をつかれたような表情で自分を指さしながら、紅茶色の髪の青年を振り仰いだ。<br />「…………自分、このお嬢様に傷つけるようなこと言ったかな？　それとも、今ごろになって恐怖をじわじわ感じたとか？」<br />「さぁ。でも、まぁ、お前のセリフを聞いたとたんに泣き出したんだ。原因はさておき、責任をとってくれ、女難のユリウスくん」<br />　関わりたくないというふうな紅茶色の髪の青年へ、黒髪の青年は不平そうに瞳を半眼にさせる。<br />　ロゼットは啜り上げながら、口を開いた。<br />「私……出来損ないなの。兄さまも姉さまも、弟も妹も……皆、アトカーシャ家に恥じないように学んでいるのに、私だけいつも学校の成績が悪くて……それを思い出して……」<br />　ロゼットへと視線を戻した黒髪の青年は、ソフトな表現をせず、直球で尋ねた。<br />「それはつまり、貴女は超がつくほど馬鹿で、そんな自分に、とてつもなく嫌悪を抱いているってこと？」<br />　ロゼットは、後ろ手の指先を握り締めた。<br />「ええ、そう。馬鹿なの、私」<br />「馬鹿はいや？」<br />「いやに決まってるでしょ！」<br />　涙を飛び散らせながら、ロゼットは叫んだ。<br />「馬鹿は、翼を持てない天使よ。翼を持つ天使が天空を舞うのを、惨めに地上で這いつくばって見上げているしかないの」<br />「そうだね。だけど──」<br />　青年は、優しいけれどどこか力強い声を紡いだ。<br />　その声に引き寄せられるようにロゼットが顔を上げると、青年は黒曜石の瞳の奥に何物にも──たとえそれがどんな運命だとしても──決して屈しない光を灯して、ロゼットを見返している。<br />「だけど、地上には綺麗な花が咲いている。地面には、もしかしたら何か面白いものが埋まっているかもしれない。届かない天空ばかり見上げていないで、周囲を見回してごらん」<br />　ロゼットの瞳は、萎れていた花が花びらを広げていくように、見開いた。新しい涙は零れなかった。<br />　黒髪の青年が腕を伸ばし服の袖で、ロゼットの頬を幾筋も伝った滴の跡を、拭う。<br />「素敵なフールライフを」<br />「上手く丸めこんだな。お見事」<br />　小声で呟く紅茶色の髪の青年。<br />　黒髪の青年が、ロゼットに気取られぬ手つきで、紅茶色の髪の青年の脛に、拳を打ちつける。<br />　紅茶色の髪の青年は、微動だしなかったけれど、顔を青ざめさせた。<br />ロゼットが涙の止まった瞳で黒髪の青年を見つめ返していると、彼はにっと笑いかけながらロゼットの頭を撫でた。<br />　そして立ち上がり、背負った絵画に邪魔そうな素振りも見せないまま、樫の扉へ向かう。<br />「ずらかろう、アウグスト」<br />　紅茶色の髪の青年がロゼットに向けていた銃を下げ、身を翻した。<br />　黒髪の青年が、把手に手をかける。<br />「私達はもう引き揚げる。悲鳴をあげるなら、あげてもかまわない。──じゃぁね」<br />戒められたままのロゼットは、自由のきかない身を乗り出した。そして口をついて飛び出た言葉は、悲鳴ではなく──<br />「また会える？」<br />　そんな言葉だった。<br />　振り返った黒髪の青年の顔に浮かぶ、不意打ちをくらったような驚いた表情。<br />「青春だ、せーしゅん」　<br />　ポツリと呟く紅茶色の髪の青年。<br />　黒髪の青年は軽く微笑した。先ほど見せた、あどけない笑い方ではない。受け流すような大人びた微笑。<br />「今、小悪魔みたいな少女につきまとわれていてね。その関係が精算できたら、また会いにきてあげてもいいかな」<br />　紅茶色の髪の青年が、銃口を引き上げた。標的は天井──真昼の輝きを放つ水晶。<br />　銃声が、滞った空気を叩きつけた。パリンという、繊細なガラス細工が砕けちるような音と、何かが床に落ちた重い音。そして扉が閉じる音。<br />　明かりが消え、一瞬にして真っ暗な幕が落ちた部屋に、ロゼットは悲鳴をあげた。 ]]>
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<dc:subject>ヴァルシア大陸物語①</dc:subject>
<dc:date>2007-03-25T23:14:31+09:00</dc:date>
<dc:creator>銀の車輪</dc:creator>
<dc:publisher>FC2-BLOG</dc:publisher>
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